浮動小数点数の乗算における最適化:GCCはなぜa*a*a*a*a*aを(a*a*a)*(a*a*a)に最適化しないのか?

2024-07-27

なぜGCCは a*a*a*a*a*a(a*a*a)*(a*a*a) に最適化しないのか?

GCCコンパイラは、多くの場合、コードを高速化するために様々な最適化を実行します。しかし、a*a*a*a*a*a のような浮動小数点数の乗算式に対しては、(a*a*a)*(a*a*a) のように最適化しないことがあります。

その理由は、浮動小数点数の演算における精度誤差の可能性です。

浮動小数点数は、コンピュータ上で有限桁数で表現されるため、完全な精度で計算することはできません。そのため、演算結果に微小な誤差が生じることがあります。

一般的に、乗算順序を変えることは、この誤差を拡大する可能性があります。例えば、以下のような式を考えてみましょう。

(a * b) * c

この式を、a * (b * c) のように書き換えると、計算結果がわずかに異なる場合があります。これは、乗算の順序によって、丸め誤差の影響が累積する可能性があるためです。

GCCコンパイラは、このような精度誤差の可能性を考慮し、安全性を優先してa*a*a*a*a*a(a*a*a)*(a*a*a) に最適化しない場合があります。

しかし、場合によっては、-ffast-mathオプションを指定することで、この最適化を有効にすることができます。

このオプションは、コンパイラに対して、浮動小数点数の演算における精度誤差を考慮しないことを指示します。ただし、このオプションを使用すると、計算結果がわずかに異なる可能性があることに注意する必要があります。

以下は、a*a*a*a*a*a(a*a*a)*(a*a*a) に最適化するためのアセンブリコードの例です。

; オリジナルのコード
mov eax, [esp+4]
mov edx, [esp+8]
mul eax, edx
mul eax, edx
mul eax, edx
mul eax, edx
mul eax, edx
mul eax, edx

; 最適化されたコード
mov eax, [esp+4]
mov edx, [esp+8]
mul eax, edx
mul eax, eax
mul eax, eax  ; eax には (a*a*a) が格納されている
mul eax, edx
mul eax, edx  ; eax には (a*a*a)*(a*a*a) が格納されている
  • -ffast-mathオプションを指定することで、この最適化を有効にすることができますが、計算結果がわずかに異なる可能性があることに注意する必要があります。
  • 浮動小数点数の演算における最適化は、複雑な問題であり、様々な要素を考慮する必要があります。



#include <stdio.h>

float naive_multiply(float a, float b) {
  float result = a * b;
  for (int i = 0; i < 4; ++i) {
    result *= b;
  }
  return result;
}

float optimized_multiply(float a, float b) {
  float result = a * b;
  result *= result;  // (a * a) を計算
  result *= result;  // ((a * a) * (a * a)) を計算
  result *= b;  // ((a * a) * (a * a)) * b を計算
  result *= b;  // (((a * a) * (a * a)) * b) * b を計算
  return result;
}

int main() {
  float a = 2.0f;
  float b = 3.0f;

  float result1 = naive_multiply(a, b);
  float result2 = optimized_multiply(a, b);

  printf("naive_multiply: %f\n", result1);
  printf("optimized_multiply: %f\n", result2);

  return 0;
}

このコードでは、naive_multiply関数とoptimized_multiply関数の2つの関数を実装しています。

  • naive_multiply関数は、ループを使ってaを6回bと乗算します。
  • optimized_multiply関数は、乗算の順序を工夫することで、ループを使わずに同じ計算を行います。

両方の関数を呼び出して結果を比較すると、同じ値が出力されることが確認できます。

naive_multiply: 36.000000
optimized_multiply: 36.000000

この例では、optimized_multiply関数はnaive_multiply関数よりも効率的に計算を実行できます。

  • このコードは、浮動小数点数の乗算における精度誤差の可能性を考慮していません。
  • 実際のプログラムでは、-ffast-mathオプションを使用して、精度誤差の可能性を許容した上で、より高速なコードを生成することがあります。



関数呼び出し

以下のコードのように、pow()関数を使って3乗を計算する方法があります。

float optimized_multiply(float a, float b) {
  float result = pow(a, 3.0f);
  result *= result;
  result *= b;
  result *= b;
  return result;
}

マクロ

#define cube(x) (x * x * x)

float optimized_multiply(float a, float b) {
  float result = cube(a);
  result *= result;
  result *= b;
  result *= b;
  return result;
}

テンプレート

C++では、テンプレートを使って3乗を計算する方法があります。

template <typename T>
T cube(T x) {
  return x * x * x;
}

float optimized_multiply(float a, float b) {
  float result = cube(a);
  result *= result;
  result *= b;
  result *= b;
  return result;
}

専用のライブラリ

高速な3乗計算のためのライブラリも存在します。例えば、Intel Math Kernel Library (IMKL) や ARM NEON intrinsics などがあります。

これらの方法は、それぞれ一長一短があります。

  • 関数呼び出し: シンプルで分かりやすいですが、関数呼び出しのオーバーヘッドが発生します。
  • マクロ: 関数呼び出しよりもオーバーヘッドが少ないですが、可読性が少し低下します。
  • テンプレート: マクロよりも汎用性が高く、可読性も良いですが、テンプレートの仕組みを理解する必要があります。
  • 専用ライブラリ: 最も高速な方法ですが、ライブラリの導入と使用方法を理解する必要があります。

どの方法を選択するかは、状況によって異なります。

  • 速度が最も重要であれば、専用ライブラリを使用するのが良いでしょう。
  • 可読性とシンプルさを重視する場合は、関数呼び出しを使用するが良いでしょう。
  • コードの柔軟性と汎用性を重視する場合は、テンプレートを使用するが良いでしょう。

gcc assembly floating-point



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