C# コンストラクタで仮想メンバーを呼び出す:警告 CA2214 の原因と解決策
C# コンストラクタでの仮想メンバー呼び出し:警告と回避策
警告の理由
C# コンストラクタは、オブジェクトの初期化処理を行う特殊なメソッドです。オブジェクトが生成される際、まず基底クラスのコンストラクタが実行され、その後派生クラスのコンストラクタが実行されます。
仮想メンバーは、派生クラスでオーバーライドできるメソッドです。コンストラクタから仮想メンバーを呼び出す場合、呼び出されるのは基底クラスのメソッドです。しかし、派生クラスで仮想メンバーをオーバーライドしている場合、コンストラクタ実行時点ではまだ派生クラスのコンストラクタが実行されていないため、オーバーライドされたメソッドではなく基底クラスのメソッドが呼び出されてしまいます。
警告の回避策
この警告を回避するには、以下の方法があります。
base
キーワードを使用する
base
キーワードを使用することで、明示的に基底クラスの仮想メンバーを呼び出すことができます。
public class Base
{
public virtual void DoSomething() { }
}
public class Derived : Base
{
public override void DoSomething() { }
public Derived()
{
// 基底クラスの DoSomething() メソッドを呼び出す
base.DoSomething();
}
}
- コンストラクタではなく別のメソッドで仮想メンバーを呼び出す
コンストラクタではなく、別のメソッドで仮想メンバーを呼び出すことで、派生クラスのコンストラクタが実行された後に呼び出すことができます。
public class Base
{
public virtual void DoSomething() { }
}
public class Derived : Base
{
public override void DoSomething() { }
public Derived()
{
// コンストラクタでは DoSomething() を呼び出さない
}
public void Initialize()
{
// 派生クラスの DoSomething() メソッドを呼び出す
DoSomething();
}
}
sealed
修飾子を基底クラスの仮想メンバーに使用する
public sealed class Base
{
public virtual void DoSomething() { }
}
public class Derived : Base
{
// DoSomething() メソッドをオーバーライドできない
// public override void DoSomething() { }
public Derived()
{
// 警告は発生しない
DoSomething();
}
}
注意事項
- コンストラクタから仮想メンバーを呼び出す必要がある場合は、上記の回避策を検討する必要があります。
- 警告 CA2214 は、潜在的な問題を示しているため、無視せずに対応することを推奨します。
// 基底クラス
public class Base
{
public virtual void DoSomething() { }
}
// 派生クラス:`base` キーワードを使用する
public class Derived1 : Base
{
public override void DoSomething() { }
public Derived1()
{
// 基底クラスの DoSomething() メソッドを呼び出す
base.DoSomething();
}
}
// 派生クラス:コンストラクタではなく別のメソッドで仮想メンバーを呼び出す
public class Derived2 : Base
{
public override void DoSomething() { }
public Derived2()
{
// コンストラクタでは DoSomething() を呼び出さない
}
public void Initialize()
{
// 派生クラスの DoSomething() メソッドを呼び出す
DoSomething();
}
}
// 派生クラス:`sealed` 修飾子を基底クラスの仮想メンバーに使用する
public class Derived3 : Base
{
// DoSomething() メソッドをオーバーライドできない
// public override void DoSomething() { }
public Derived3()
{
// 警告は発生しない
DoSomething();
}
}
class Program
{
static void Main(string[] args)
{
var derived1 = new Derived1();
var derived2 = new Derived2();
derived2.Initialize();
var derived3 = new Derived3();
}
}
Derived1
クラスは、base
キーワードを使用して基底クラスのDoSomething()
メソッドを呼び出しています。Derived2
クラスは、コンストラクタではなくInitialize()
メソッドで仮想メンバーDoSomething()
を呼び出しています。Derived3
クラスは、基底クラスのDoSomething()
メソッドにsealed
修飾子を付けてオーバーライドできないようにしています。
C# 8.0 以降では、コンストラクタ内で仮想メンバーを直接呼び出すことが可能です。この方法を使用すると、base
キーワードを使用する必要がなくなり、コードがより簡潔になります。
public class Base
{
public virtual void DoSomething() { }
}
public class Derived : Base
{
public override void DoSomething() { }
public Derived()
{
// コンストラクタ内で DoSomething() メソッドを直接呼び出す
DoSomething();
}
}
仮想メンバーを非仮想メンバーにする
仮想メンバーを非仮想メンバーにすることで、派生クラスでオーバーライドできなくなります。この方法を使用すると、コンストラクタから仮想メンバーを呼び出しても、常に基底クラスのメソッドが呼び出されます。
public class Base
{
public void DoSomething() { } // 仮想メンバーを非仮想メンバーにする
}
public class Derived : Base
{
// DoSomething() メソッドをオーバーライドできない
// public override void DoSomething() { }
public Derived()
{
// 警告は発生しない
DoSomething();
}
}
コンストラクタを使用せずにオブジェクトを初期化する
C# では、コンストラクタを使用せずにオブジェクトを初期化することも可能です。この方法を使用すると、コンストラクタから仮想メンバーを呼び出す必要がなくなり、警告 CA2214 を回避できます。
public class Base
{
public virtual void DoSomething() { }
}
public class Derived : Base
{
public override void DoSomething() { }
public static Derived Create()
{
var instance = new Derived();
// コンストラクタではなく、Create() メソッドで DoSomething() メソッドを呼び出す
instance.DoSomething();
return instance;
}
}
class Program
{
static void Main(string[] args)
{
var derived = Derived.Create();
}
}
- これらの方法は、状況に応じて使い分ける必要があります。
- コンストラクタ内で仮想メンバーを直接呼び出す方法は、C# 8.0 以降でのみ使用できます。
- 仮想メンバーを非仮想メンバーにする方法は、派生クラスで仮想メンバーをオーバーライドできない場合にのみ使用できます。
- コンストラクタを使用せずにオブジェクトを初期化する方法は、コードが複雑になる可能性があります。
c# constructor warnings