Haskellにおける「<$」記号と「fmap . const」の関係を徹底解説

2024-07-27

Haskellにおける「<」記号と「fmap.const」の関係

Functorクラスと「fmap」関数

まず、Functorクラスとは、データ構造を型安全な方法で操作するための抽象化を提供するクラスです。このクラスには、**「fmap」**と呼ばれる関数が定義されており、これはデータ構造内の値を関数に適用して新しいデータ構造を生成します。

class Functor f where
  fmap :: (a -> b) -> f a -> f b

**「fmap」**関数は、以下の型を持つ関数です。

fmap :: (a -> b) -> f a -> f b

ここで、

  • a は元のデータ構造内の値の型
  • f はデータ構造の型

**「fmap」**関数の具体的な動作は、データ構造の種類によって異なりますが、一般的には以下のようになります。

  1. データ構造を分解して個々の値を取り出す
  2. 各値に引数として与えられた関数を適用する
  3. 処理結果を新しいデータ構造に再構築する

「const」関数

**「const」**関数は、引数に関わらず常に同じ値を返す関数です。

const :: a -> b -> a
  • a は引数の型
  • b は返値の型

**「const」**関数の具体的な動作は、以下のようになります。

  1. 引数を無視する
  2. 最初の引数をそのまま返す

「<」記号の仕組み

**「<」記号は、「fmap . const」関数のエイリアスです。つまり、「fmap」関数に「const」**関数を合成して新しい関数を生成し、その関数を適用することを意味します。

<$ :: Functor f => a -> f b -> f b
  • a は**「const」**関数に渡す値の型

**「<$」**記号の具体的な動作は、以下のようになります。 1. 引数として与えられた値を**「const」**関数に渡す 2. 生成された**「const」**関数をデータ構造に**「fmap」**関数で適用する 3. 処理結果を返す ### 例 **「<$」**記号の具体的な使い方を例示します。

-- Maybe型に「<$」記号を使って定数を挿入する
constTwo :: Maybe a -> Maybe Int
constTwo = Just 2 <$ id

-- Maybe型に値を挿入する
insertTwo :: Int -> Maybe a -> Maybe Int
insertTwo x = Just x <$ id



-- Maybe型に「<$」記号を使って定数を挿入する
constTwo :: Maybe a -> Maybe Int
constTwo = Just 2 <$ id

-- テスト
main :: IO ()
main = do
  print (constTwo (Just 3))  -- 出力: Just 2
  print (constTwo Nothing)   -- 出力: Nothing

解説:

  • constTwo 関数:
    • Maybe a 型の値を受け取り、Maybe Int 型の値を返します。
    • Just 2const 関数に渡して、常に 2 を返す関数を作成します。
    • この関数を id 関数に合成し、Maybe 型の値に適用します。
  • main 関数:
-- Maybe型に値を挿入する
insertTwo :: Int -> Maybe a -> Maybe Int
insertTwo x = Just x <$ id

-- テスト
main :: IO ()
main = do
  print (insertTwo 5 (Just 3))  -- 出力: Just 5
  print (insertTwo 5 Nothing)   -- 出力: Just 5

リスト型に定数を挿入する

-- リスト型に「<$」記号を使って定数を挿入する
constTwo :: [a] -> [Int]
constTwo = [2] <$ id

-- テスト
main :: IO ()
main = do
  print (constTwo [1, 2, 3])  -- 出力: [2, 2, 2]
  print (constTwo [])        -- 出力: [2]
-- リスト型に値を挿入する
insertTwo :: Int -> [a] -> [Int]
insertTwo x = [x] <$ id

-- テスト
main :: IO ()
main = do
  print (insertTwo 5 [1, 2, 3])  -- 出力: [5, 5, 5]
  print (insertTwo 5 [])        -- 出力: [5]



「<」記号以外の代替方法

「fmap」関数とラムダ式

**「fmap」関数とラムダ式を組み合わせる方法です。これは、「<$」**記号とほぼ同じ機能を提供しますが、より明示的で詳細なコードを書くことができます。

-- Maybe型に定数を挿入する
constTwo :: Maybe a -> Maybe Int
constTwo m = fmap (const 2) m

-- リスト型に定数を挿入する
constTwo :: [a] -> [Int]
constTwo xs = fmap (const 2) xs

「for」ループ

データ構造を明示的にループ処理する方法です。これは、シンプルなデータ構造の場合に有効ですが、再帰的なデータ構造の場合は煩雑になる可能性があります。

-- Maybe型に定数を挿入する
constTwo :: Maybe a -> Maybe Int
constTwo Nothing = Nothing
constTwo (Just x) = Just 2

-- リスト型に定数を挿入する
constTwo :: [a] -> [Int]
constTwo [] = []
constTwo (x:xs) = 2 : constTwo xs

再帰関数

再帰関数を使用して、データ構造を再帰的に処理する方法です。これは、複雑なデータ構造を処理する場合に有効ですが、コードがわかりにくくなる可能性があります。

-- Maybe型に定数を挿入する
constTwo :: Maybe a -> Maybe Int
constTwo Nothing = Nothing
constTwo (Just x) = Just 2

-- リスト型に定数を挿入する
constTwo :: [a] -> [Int]
constTwo [] = []
constTwo (x:xs) = 2 : constTwo xs

モナド

モナドを使用して、計算を抽象化する方法です。これは、高度な抽象化とコードの再利用性を実現できますが、理解するのが難しい場合があります。

-- Maybe型に定数を挿入する
constTwo :: Maybe a -> Maybe Int
constTwo = return 2

-- リスト型に定数を挿入する
constTwo :: [a] -> [Int]
constTwo = replicateM 2

それぞれの方法の比較

方法利点欠点
「<$」記号 \$簡潔で分かりやすい \型推論が難しい場合がある \
\「fmap」関数とラムダ式 \明示的で詳細なコード \
「for」ループシンプルなデータ構造に適している再帰的なデータ構造には不向き
再帰関数複雑なデータ構造を処理できるコードがわかりにくくなる可能性がある
モナド高度な抽象化とコードの再利用性理解するのが難しい

haskell functor higher-order-functions

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