C++でstd::expectedとstd::applyを活用してエラー処理を簡潔かつ効率的に行う方法

2024-07-27

C++におけるstd::applystd::expectedの活用:詳細解説

この解説では、C++23で導入されたstd::expectedと組み合わせてstd::applyをどのように利用できるかを詳しく解説します。

std::expectedとは?

std::expectedは、値またはエラー情報を保持するクラステンプレートです。従来のstd::optionalとは異なり、std::expectedはエラー情報を詳細な型で表現することができます。

std::applyとは?

std::applyは、関数オブジェクトを可変個数の引数に適用する汎用アルゴリズムです。C++23では、std::tuplestd::arrayなどのコンテナだけでなく、範囲やイテレータにも適用できるようになりました。

std::expectedstd::applyの組み合わせ

std::expectedstd::applyを組み合わせることで、エラー処理をより簡潔かつ効率的に行うことができます。具体的には、以下の2つの方法があります。

すべてのstd::expectedが成功している場合にのみ関数を適用する

#include <expected>
#include <algorithm>
#include <tuple>

int main() {
  std::expected<int, std::string> e1(42);
  std::expected<int, std::string> e2(84);
  std::expected<int, std::string> e3(126);

  std::tuple<std::expected<int, std::string>, std::expected<int, std::string>, std::expected<int, std::string>> tuple(e1, e2, e3);

  auto result = std::apply(
      [](std::expected<int, std::string> const& e1, std::expected<int, std::string> const& e2, std::expected<int, std::string> const& e3) {
        return e1.value() + e2.value() + e3.value();
      },
      tuple);

  if (result.has_value()) {
    std::cout << "結果: " << result.value() << std::endl;
  } else {
    std::cout << "エラー: " << result.error() << std::endl;
  }

  return 0;
}

この例では、std::applyを使用して、3つのstd::expectedオブジェクトの値をすべて足し合わせる関数を適用しています。すべてのstd::expectedオブジェクトが成功している場合のみ、関数が適用され、結果は新しいstd::expectedオブジェクトに格納されます。

エラーが発生したstd::expectedオブジェクトがあっても関数を適用する

#include <expected>
#include <algorithm>
#include <tuple>

int main() {
  std::expected<int, std::string> e1(42);
  std::expected<int, std::string> e2(84);
  std::expected<int, std::string> e3(std::error_condition(std::errc::division_by_zero));

  std::tuple<std::expected<int, std::string>, std::expected<int, std::string>, std::expected<int, std::string>> tuple(e1, e2, e3);

  auto result = std::apply(
      [](std::expected<int, std::string> const& e1, std::expected<int, std::string> const& e2, std::expected<int, std::string> const& e3) {
        return e1.value() + e2.value() / e3.value();
      },
      tuple);

  if (result.has_value()) {
    std::cout << "結果: " << result.value() << std::endl;
  } else {
    std::cout << "エラー: " << result.error() << std::endl;
  }

  return 0;
}



#include <expected>
#include <algorithm>

int main() {
  std::expected<int, std::string> e1(42);
  std::expected<int, std::string> e2(2);

  auto result = std::apply(
      [](std::expected<int, std::string> const& e1, std::expected<int, std::string> const& e2) {
        if (!e1.has_value() || !e2.has_value()) {
          return std::unexpected("入力値にエラーがあります。");
        }

        return e1.value() * e2.value();
      },
      e1, e2);

  if (result.has_value()) {
    std::cout << "結果: " << result.value() << std::endl;
  } else {
    std::cout << "エラー: " << result.error() << std::endl;
  }

  return 0;
}

このコードは以下の動作をします。

  1. std::expectedオブジェクトe1e2を作成します。
  2. std::applyを使用して、2つのstd::expectedオブジェクトにラムダ式を適用します。
  3. ラムダ式は、両方のstd::expectedオブジェクトが値を持っていることを確認します。
  4. 両方のstd::expectedオブジェクトが値を持っている場合、ラムダ式はそれらの値を乗算し、結果を新しいstd::expectedオブジェクトに格納します。
  5. std::expectedオブジェクトresultが値を持っている場合、その値をコンソールに出力します。



std::expectedstd::applyを使用せずに、独自のエラー処理関数を作成することができます。この方法は、より柔軟なエラー処理が必要な場合に役立ちます。

#include <optional>
#include <algorithm>

int safe_multiply(int x, int y) {
  if (y == 0) {
    return std::numeric_limits<int>::max(); // 独自のエラーコードを設定
  }

  return x * y;
}

int main() {
  std::optional<int> x = 42;
  std::optional<int> y = 2;

  auto result = std::apply(
      [](std::optional<int> const& x, std::optional<int> const& y) {
        if (!x || !y) {
          return std::optional<int>();
        }

        return safe_multiply(*x, *y);
      },
      x, y);

  if (result) {
    std::cout << "結果: " << *result << std::endl;
  } else {
    std::cout << "エラーが発生しました。" << std::endl;
  }

  return 0;
}

この例では、safe_multiplyという独自のエラー処理関数を作成しています。この関数は、引数のいずれかが0である場合、エラーコードを返します。

Boost.Optionalを使用する

Boost.Optionalは、C++標準ライブラリに含まれていないstd::optionalの代替実装です。Boost.Optionalには、エラー処理に役立ついくつかの追加機能が含まれています。

#include <boost/optional.hpp>
#include <algorithm>

int safe_multiply(boost::optional<int> const& x, boost::optional<int> const& y) {
  if (!x || !y) {
    return boost::none;
  }

  return *x * *y;
}

int main() {
  boost::optional<int> x = 42;
  boost::optional<int> y = 2;

  auto result = std::apply(
      safe_multiply,
      x, y);

  if (result) {
    std::cout << "結果: " << *result << std::endl;
  } else {
    std::cout << "エラーが発生しました。" << std::endl;
  }

  return 0;
}

この例では、Boost.Optionalを使用して、std::optionalオブジェクトを処理しています。Boost.Optionalには、has_value()value()error()などのメソッドが含まれており、エラー処理を簡潔に行うことができます。

Exceptionsを使用する

Exceptionsを使用して、エラー処理を行うこともできます。ただし、Exceptionsはパフォーマンス上のオーバーヘッドが大きいため、頻繁に使用することは避けた方がよいでしょう。

int safe_multiply(int x, int y) {
  if (y == 0) {
    throw std::runtime_error("0で割ることはできません。");
  }

  return x * y;
}

int main() {
  try {
    int x = 42;
    int y = 2;

    int result = safe_multiply(x, y);

    std::cout << "結果: " << result << std::endl;
  } catch (const std::exception& e) {
    std::cout << "エラー: " << e.what() << std::endl;
  }

  return 0;
}

この例では、Exceptionsを使用して、safe_multiply関数のエラーを処理しています。

std::expectedstd::applyは、エラー処理を簡潔かつ効率的に行うための強力なツールです。しかし、状況によっては、他の方法の方が適切な場合もあります。


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