テンプレートエイリアス、型推論、SFINAE を活用した C++ テンプレート特殊化の簡略化
C++ テンプレート特殊化の簡略化
この問題に対処するために、C++11 ではいくつかの新機能が導入されました。これらの機能を活用することで、テンプレート特殊化を簡略化し、コードの読みやすさと保守性を向上させることができます。
テンプレートエイリアス
テンプレートエイリアスを使用すると、テンプレートパラメータを省略して、テンプレートを別の名前で参照することができます。例えば、以下のコードは std::vector
を MyVector
という名前でエイリアス化しています。
template <typename T>
using MyVector = std::vector<T>;
このエイリアスを使用すると、MyVector<int>
のように、std::vector<int>
をより簡潔に記述することができます。
型推論
C++11 では、コンパイラがテンプレートパラメータを自動的に推論できるようになりました。例えば、以下のコードでは、std::make_unique
のテンプレートパラメータは int
型として自動的に推論されます。
std::unique_ptr<int> ptr = std::make_unique(42);
型推論を使うと、コードをより簡潔に記述することができます。
SFINAE
SFINAE (Substitution Failure Is Not An Error) は、テンプレートパラメータに基づいて、テンプレート関数のオーバーロードを選択するためのテクニックです。SFINAE を使用すると、テンプレート特殊化の必要性を減らすことができます。
例えば、以下のコードは、std::is_integral
型特性を使用して、add
関数のオーバーロードを選択します。
template <typename T, typename U>
typename std::enable_if<std::is_integral<T>::value && std::is_integral<U>::value, int>::type
add(T a, U b) {
return a + b;
}
template <typename T, typename U>
typename std::enable_if<!std::is_integral<T>::value || !std::is_integral<U>::value, double>::type
add(T a, U b) {
return a + b;
}
SFINAE を使用すると、コードをより簡潔に記述し、テンプレート特殊化の必要性を減らすことができます。
#include <iostream>
#include <vector>
// テンプレートエイリアス
template <typename T>
using MyVector = std::vector<T>;
// 型推論
template <typename T>
void print_vector(std::vector<T> v) {
for (auto& x : v) {
std::cout << x << " ";
}
std::cout << std::endl;
}
// SFINAE
template <typename T, typename U>
typename std::enable_if<std::is_integral<T>::value && std::is_integral<U>::value, int>::type
add(T a, U b) {
return a + b;
}
template <typename T, typename U>
typename std::enable_if<!std::is_integral<T>::value || !std::is_integral<U>::value, double>::type
add(T a, U b) {
return a + b;
}
int main() {
// テンプレートエイリアス
MyVector<int> v = {1, 2, 3};
print_vector(v);
// 型推論
std::vector<double> v2 = {1.1, 2.2, 3.3};
print_vector(v2);
// SFINAE
int x = 1;
double y = 2.5;
std::cout << add(x, y) << std::endl;
return 0;
}
このコードは以下の通り実行されます。
1 2 3
1.1 2.2 3.3
3.5
C++ テンプレート特殊化を簡略化する他の方法
CRTP (Curiously Recurring Template Pattern)
CRTP は、テンプレートクラス自身を派生クラスのテンプレートパラメータとして渡すテクニックです。CRTP を使用すると、特殊化コードを簡略化し、コードの再利用性を向上させることができます。
例えば、以下のコードは、CRTP を使用して Printable
クラスを定義しています。
template <typename T>
class Printable {
public:
virtual void print() const = 0;
protected:
T* self;
};
template <typename T>
class MyClass : public Printable<MyClass> {
public:
void print() const override {
std::cout << "MyClass: " << self << std::endl;
}
};
int main() {
MyClass c;
c.print();
return 0;
}
MyClass: 0x12345678
CRTP は、テンプレートクラスの機能を拡張する必要がある場合に有効なテクニックです。
テンプレートメタプログラミング
テンプレートメタプログラミングは、コンパイル時にテンプレートを使用してコードを生成するテクニックです。テンプレートメタプログラミングを使用すると、特殊化コードを完全に排除し、コードの汎用性を向上させることができます。
例えば、以下のコードは、テンプレートメタプログラミングを使用して、ファクトリアル関数を定義しています。
template <int N>
struct Factorial {
static constexpr int value = N * Factorial<N - 1>::value;
};
template <>
struct Factorial {
static constexpr int value = 1;
};
int main() {
std::cout << Factorial::value << std::endl;
return 0;
}
120
テンプレートメタプログラミングは、複雑なコードを生成する必要がある場合に有効なテクニックです。
c++ c++11 templates